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« あくま日誌 | ネーブル »

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あくま日誌

リンゴは無垢の塊
故にあらゆる罪を飲み込む危険な存在で
彼ができたときは天も処置に迷ったのではないだろうか。

ただひとつの掟だけを支えなさいと命ぜられ
そのほかは成るままに任された。

彼の使命は 園の中央にある二本の樹の番であった。

彼の無垢さは、僅かな罪を抉るような、同時に赦しさえするもので
堕天使の筆頭シュクレすら忍んで園に現れては陸竜の姿を拝み、ため息をついて天と地を憂いたほどである。

彼の使命を邪魔してまで二本の樹に触れようなどという動物は現れなかった。

だがリンゴのつがいとして海を任された竜ー 後のポワル は、
リンゴと同じく罪を理解しない生き物だったが
雌の意識が強く、リンゴを伴侶として強く意識していたために
彼を自らのものと束縛せんとする気があった。
 
我の強い彼女にとって無垢は単なる白痴であり、保護するものではなく支配するものだった。


*


リンゴは現代に器も新たに転生を果たすが、その幼き心をココアとネーブルに預けられる。

愛する人を哀しませる ということを、リンゴは罪だと認識することになる。

リンゴはしばらくそれ以上の罪を理解することがないが
後の彼にとってもそれ以上に残酷な罪はなかっただろう。

彼が掟を破るのも唆されたのも罰を受けたのも
たくさんの人が傷付いていくのも

自分が大昔に犯した たったひとつの罪のせいだったと知ることになるからだ。



しかしここに到達するには長く時間が必要だろう。

いまだ彼のおかれるは何事も知らぬまま笑う時代である。


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あくま日誌